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幸子にラブ・ソングを

第6話

更新確認がやってきた!

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―リフレインが叫んでる・・・

海外からの電話をうまく取り次げず、幸子は自席でうなだれていた。

『サチコの発音、ベイビーみたいだったよ★』

来日していたビジター・Tiger Wooから、ウィンクとともに放たれた言葉は、

呪いになって幸子を縛りつけている。

それなりに準備したつもりだったんだけど、甘かったかな・・・

「幸子さぁ~ん、お疲れさまですぅ~」

振り返ると、幸子が今いちばん会いたくない人物。B&Sでのお仕事初日に流暢な英語を披露していたエミリが立っている。八つ当たりと分かっていても、英語スキルの高いエミリへの羨望と、自分への失望がゴチャまぜになって自分でも分かるくらいビミョウな表情になってしまう。

「下にプロバンクの新橋さんがいらしてるんですけどぉ~。いま大丈夫ですぅ??」

エミリは、幸子のフクザツな胸中など知ってか知らずか、きゅるん☆とした表情で幸子の返事を待っている。

「ありがとう。すぐ行くね」

作り笑顔を悟られる前に幸子は席を立った。
そういえば、Tigerの帰国直後にプロバンクから電話をもらった気がするけど、何の件だっけ?おぼろげな記憶を探りつつ階下に着くと、新橋くんが手を振っているのが見えた。

「内さん、お疲れ様です!お仕事、いかがですか?今日は近況もうかがいつつ、契約更新についてのお話もしたいと思ってまして・・・」

そうだった。仕事をはじめるときに青山さんに言われたことを思い出す。
仕事は数ヵ月ごとの更新、更新の判断材料のひとつに『職務遂行能力』があったはず・・・。

もしや

内心ビクビクの幸子をよそに、新橋くんはニコニコとして「契約更新」を告げた。

「部長の芝さんも、『内さんは、急なビジターのアテンドも前向きに対応してくれたし、ビジターも大喜びだった』って仰ってましたよ。内さんはいかがですか?」

大喜びだと?そんな、信じられない。

「どうかしました?」

返事をしない幸子に、新橋くんが気遣わしげに尋ねる。

「いえ、あの・・・」

いったんは隠そうとしたものの、新橋くんに「何でも言ってください!」と爽やかに言われ、仕方なくTigerから英語力を指摘されたことを白状する。

「ああー・・・」

新橋くんは1人で納得したようにつぶやいた。

「ボクの前任者に聞いた話ですけどね、Tigerさんて、からかいつつ褒める人らしくて、みなさん最初は戸惑うらしいです」

なんだって?幸子はフリーズしていた気持ちがフワッと解き放たれるのを感じながら、「心配でしたら芝部長と話しますけど、どうします?」と尋ねる新橋くんを制した。

「いえ、大丈夫です。ありがとうございます!!私からも、ぜひ更新でお願いします!!

もし1人だったら、自分の仕事への評価なんて怖くて人に聞けなかった。
Tigerの呪縛からも解き放たれ、改めて前向きな気持ちでがんばろうと心に誓う幸子であった。

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