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幸子にラブ・ソングを

第1話

JOBOUTIQUEとの出会い

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訳あってただいま無職。本名、内 幸子。38歳・未婚、この物語の主人公である。

なんでもない平日の夕暮れ。東急田園都市線を渋谷方面へ向かっている車内は、
帰宅ラッシュ前のせいもあってか、買い物帰りの奥様や学生が点々と座っている。
そんな人々に溶け込んで、疲れ果てた姿を隠そうとせず電車に揺られている幸子。

見るともなく見ていた車窓から夕陽が差し込み、
あぁ、もう日暮れか…―
働いていたころに比べ、あれだけ意識していた時間感覚が欠落していることを感じる。

時を忘れるほど、どうしてこんな疲れているのかを紐解いてみると、
原因は妹からの頼みの安請け合いだった。

というのも、私、幸子(さちこ)の手帳が真っ白…
いや、現在は人生そのものが真っ白であることにつけこみ、

「お姉ちゃんさ、仕事してなくて、ヒマだよね?
すこしお出掛けしている間だけ、てぃあら(※姪っ子)の面倒見といてくれる~?」

と、自由奔放な4つ年下の妹(内 町子/34歳子持ち)に
姪っ子の面倒を押し付けられてしまったのだ。

妹の言い回しに、少しだけ眉間にしわを寄せながらも、
昔からどちらかというと面倒見は良い方なので、快く引き受ける幸子。
しかし、このてぃあら(4歳目前・来春から幼稚園へ入園予定)の
バイタリティを幸子は甘く見ていた。

無尽蔵と思えるようなスタミナを背景に、人の気遣いや提案をそっちのけ、
おままごとをやっていたかと思ったら、次はアイドルごっこ、次はアナ雪、ゲームと…。
あっちへ行ったり、こっちへ行ったり…終いには、

「幸子おばちゃん、なんで結婚もお仕事もしてないの?“にーと”なの?

と、言葉の重みを知らない無垢な発言が幸子に放たれる始末。
どこで“ニート”という言葉を覚えたんだか・・・と、怒るに怒れず、ココロだけが痛い
その上、近くにいた母からは

「あなたもいい年なんだからねぇ・・」

と、含蓄のある一言。もうすでに、てぃあらに翻弄されて言い返す気力もない。
そんな心身ともに傷ついた、帰り道の車内なのである。

―好きで無職なわけじゃない。
ただ!次の一歩の踏み出し方がわからないだけ―

最寄りまで数駅のところ、ふと、我に返り、
「無給ベビーシッターなんて!」と、友だちにまで何か言われたらたまらんと
気分転換も兼ねて、いつものSNSをチェックしてみる。

しばらくスクロールしていくと、可愛らしいJOBOUTIQUEという広告バナー。

なんだか好きなデザイン!とテンションがやや戻り、
新しいアパレルブランドと半ば勘違いしつつ、軽い気持ちでクリック。

あなただけのお仕事スタイリスト?女性の実績が多くて、語学や外資に強い?
アパレルじゃないけど…脱・無給ベビーシッターには、いいかも知れない。―

話を聞くだけならタダでしょ!というアラサーには珍しいフットワークの軽さを発揮し、
ごく軽い気持ちでエントリーボタンを押す幸子であった。

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